社長とは恋愛しません!
「話って、何?」

「そんなつんけんするなよ。一度は愛し合った仲じゃないか。」

そう言われると辛い。

けれど、それを言うなら、私だって言いたい。


「はぁーあ。どうも景子に会うと、昔の俺を思い出す。」

「はあ?」

付き合っていた頃の楽しい記憶を思い出すならまだしも、自分の事?

「分かってるんだ。本当は景子のせいじゃないって事。」

「英寿さん……」

何、急にしおらしくなっちゃって。

逆に、私の方が悪いみたいじゃない。

「会社が倒産したのも、俺の実力がなかったからだし。景子が愛想つかしたのも、分かるし。」

「私は、愛想なんてつかしてないわよ。別れようと言ったのは、そっちじゃない。」

「分かってるって。だから、嫌だったんだ。」

知らない間に、英寿さんの目に涙が浮かんでいた。

「全部、景子のせいじゃない。俺が悪いんだって。身に染みて分かるから。」

「……だから、私と会うと、文句を言うしかなかったのね。」

「ああ。」

私は、英寿さんを抱きしめた。
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