社長とは恋愛しません!
柚季君は動かずに、私がこの紙を持って、自分のデスクに行く事を待っている。

けれど、身体が動かない。

裏切られたという気持ちが、私の全身を巡っている。


「未来社での仕事。きっと、景子さんのキャリアアップにつながると思う。」

だからそれは、この会社でしたいって、何度も言ったよね。

「後々、この会社でも、秘書を増やそうと思う。その時は、景子さんに戻って来て欲しい。」

「……出向と言う事ですか。」

「表向きはそうだね。でも、期限はいつまでになるか、分からない。」

それじゃあ、体のいい転職じゃん。

柚季君が戻って欲しいと言わなければ、私はずっと未来社のまま。


「私がいない間の秘書は、誰がするんですか?」

「流石にね。また新しい秘書を雇うのは、どうかと思うから。総務の人に手伝って貰うよ。」

そっか。

じゃあ、私がいなくても、よくなったんだね。

だったら、私が言う答えは、一つしかない。


「分かりました。未来社へ行きます。」

私は頭を下げて、自分のデスクに向かった。
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