社長とは恋愛しません!
おばあちゃんは、大きく手を叩いた。

「約束通り、お代は全て無料にするよ。」

「えっ?」

私は柚季君を見た。

「小さい頃、おばあちゃんと約束したんだ。結婚したい相手ができたら、ここに連れて来て、プロポーズするって。」

「だから、今まで連れて来て貰えなかったのね。」

おばあちゃんとそんな約束を。

「そして成功したら、タダにするってね。」

おばあちゃんは、ウィンクをした。


帰りにおばあちゃんに、白い花のブーケを貰った。

プロポーズに成功したカップルの女性に、いつもあげているらしい。

私は知らなかったけれども、あの丘の上、プロポーズの名所になっているという事だ。

どうりで、お会計もせずに、丘の上に行ったわけだ。


「指輪は、今度一緒に買いに行こう。」

「そうね。」

記念の指輪。そう言えば、私。柚季君に指輪買って貰うの、初めてかも。

乗ってきた車に乗って、私は柚季君の家を目指す。


この人と結婚する。

そう二人で決めた夜は、特別な夜になりそうで、私は何となく柚季君の肩に寄り添った。

「ありがとう、柚季君。」

すると柚季君は、スーッと寝息を立てて、寝ていた。

疲れたんだね。

私はそっと、スーツの上着を、柚季君の上に掛けてあげた。
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