社長とは恋愛しません!
「ちょっと家に上がらせてね。」

お母さんは、早速リビングに行くと、手に持っていたケーキの箱を開けた。

「はい、柚季の好きなレスターレのショートケーキよ。」

「うわっ!」

飛びつこうとした柚季君は、私を見て思い止まった。

「あら。婚約者さんは、レスターレのショートケーキ知らないの?」

「それは知っています。」

クリームが甘すぎず、絶妙な味のショートケーキだ。

だがそれを、柚季君が好きだとは、知らなかった。

「だったらいいじゃない。柚季、ほら食べなさい。」

それでも柚季君は、私をちらっと見ている。


「もしかして、婚約者の方に気を遣っているの?」

「あっ、いや。」

「好きなケーキも食べさせて貰えないなんて。本当に結婚して大丈夫なの?」

私は、ムッとした。

誰が25にもなって、母親の買ってきたショートケーキに群がるか!

でも、お母さんにそう言われるのは、癪だ。

「柚季君。せっかく買ってきて貰ったんだから、頂きましょう。」

私は自分の家のように、フォークを3本出した。
< 273 / 295 >

この作品をシェア

pagetop