社長とは恋愛しません!
「残念。婚約者の方の分はないのよ。」

声を出さずに、えっと呟く。

「だってまさか、婚約者の方と一緒に暮らしているなんて、お母さん知らなかったわ。」

柚季君を見ると、しまったと言う顔をしている。

「知らないのに、買って来れる訳ないわよね。」


ええ、そうですね。お母さん。

じゃあ、私は一人だけ、お預けくらうのか。


「景子。一緒に食べよう。ほら。」

柚季君が、ショートケーキを差し出してくれた。

「柚季君……」

「いいじゃん。一つのケーキを二人で分け合ってさ。」

じーんと胸が熱くなる。

柚季君、優しい。

お言葉に甘えて、一口ケーキを食べる。

うーん!美味しい!さすが!


「ところで、柚季は何で花音ちゃんと、結婚しないの?」

その発言に、ケーキが喉に詰まった。

「ゴホッゴホッ!」

「景子、大丈夫?」

柚季君が慌てて水を持って来てくれたから、助かった。
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