社長とは恋愛しません!
「母さん。」

先に口を開いたのは、柚季君だった。

「俺はもう、子供じゃないんだ。会社を背う社長だし。景子との結婚も考えている。」

その時、お母さんの眉がピクッと動いた。

「母さんが何と言おうと、景子は側に置く。」

ドキンとした。

この前まで、弱きだった柚季君とは大違い。


「分かりました。」

お母さんは、お手上げポーズだ。

「柚季がそこまで言うのなら、お母さんは何も言わないわ。」

立ち上がったお母さんは、荷物を持って、ドアに向かった。

「あの……」

話しかけると、お母さんは心なしか微笑んだ気がする。

「景子さん、柚季をお願いね。」

その瞬間、お母さんに認められた気がした。

「はい!」

私が頭を下げている間に、お母さんは社長室を出て行ってしまった。


「はぁー。」

久々に、大きなため息をついた。

「よかった。柚季君の意見が通って。」
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