社長とは恋愛しません!
私が手を出すと、お母さんがその手を押さえた。

「ここは、お父さんの話を聞いてあげて。」

お母さんがそう言うので、私はまた座り直した。

「正直、景子に何かあった時、まだ若い君に任せて大丈夫なのか。」

「ご心配なく。」

柚季君は前のめりになって、はっきりと言ってくれた。

「景子さんに何かあった時は、全力で支えます。」

「うん。まあ、そうでなければ、結婚の話はしないよな。」

お父さん、私が7歳も年上の事、気にしているんだ。


「お父さん、私。柚季君と一緒にいて、年の差を感じた事はないよ。」

お父さんと柚季君が、私を見る。

「それくらい、柚季君はしっかりしている。それに、この歳で社長だよ?会社のトップだよ?しっかりしてなきゃ、務まらないって。」

「そうだな。」

お父さんは、窓の外を見た。

「許さなきゃ、駄目なんだろうなぁ。」

その言葉を聞いて、涙が出て来た。

32にもなって、行き遅れで、早く安心させてあげなきゃと思っていたけれど、そうじゃないんだって。

娘が何歳になっても、お父さんがこの人ならって言う人に、託したいんだよね。


「お父さん。僕は、景子さんの事が好きです。」

急に、柚季君が告白しだした。

「お父さんに負けないくらい、景子さんの事が好きです。」

真っすぐに、お父さんを見て。

「ですから、景子さんとの結婚を許して頂けるまで、僕待ちます。」

そしてお父さん、本日2度目のため息。

「いいよ。そんなに景子の事が好きなら、結婚しなさい。」

その瞬間、ボロボロと涙が出て来た。

「お父さん、ありがとう。」

その言葉しか、泣いて言えなかった。
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