推しの中の人があまりにも尊い!
十五話 推しの中の人があまりにも尊い!



悠征「誕生日終わるまで、2人で過ごしたい。
つか、その時間に帰すわけにもいかないけど」

純「それって……」


照れくさそうにそう言った悠征に、純はぼっと顔を赤くする


純(…………お泊まりってこと!?!?!?!?)





◾️場面転換
悠征の家
純が先にシャワーを借り、悠征の服を彼シャツ状態で着て、カチコチに緊張してローテーブル前のクッションに座っている

そして今シャワーから上がった悠征は、純の前に飲み物を用意する


悠征「喉乾いてねえ?」

純「あ、ありがとう……」


ぎこちなくコップを受け取った純を見て、クックッと笑いながらベッドに腰掛ける悠征


悠征「なんでそんな硬くなってんの。
初めて来たわけじゃないのに」

純「あの時とは状況違うじゃん……!?
今は夜!パジャマ!そしてお泊まり……!!!!」

悠征「ふっ……そうしてると普通なんだけどな」

純「えっ、何?」


吹き出して小声で呟いた悠征に、聞き取れず聞き返す純
悠征の頭には、変なところで思いがけないほどの積極性を見せ、自分をこれ以上ないほどドキドキさせてきた純の姿が過ぎっている
しかし、悠征は素知らぬ顔で話を流す


悠征「いやなんでも?
俺の服着てる純、いいな〜と思って」

純「う……あの、正直推しの匂いに包まれてるってこういう気持ちなんだなってオタク心が騒いでます」

悠征「また推しかよ」

純「ごめん」

悠征「別に、推しだけじゃないってわかってるからいいけど。
……なあ、こっち来いよ」

純「…………」

悠征「何、誕生日の俺のお願い聞いてくれないの」

純「……ずるい」

悠征「ずるくて結構」


いつかもしたような(五話)やり取りをしながら、おずおずと純が立ち上がり、ベッドに座っている悠征の前に立った

悠征が純の腕を掴んで引き寄せたことにより、純は片足をベッドにかけて悠征に覆い被さる形になる
至近距離に、ドクンドクンと2人の心臓が高鳴る


悠征「こうしてると、水族館を思い出すな」


純の脳裏に、水族館で悠征を押し倒し、熱っぽい声で初めて名前を呼ばれた時のことがフラッシュバックする

(回想)
悠征「す、み」
(回想終了)


純「う……あの説はどうも……」

悠征「あの積極性はどこ行ったんだよ」


あの時とは違い、恥ずかしくて悠征を直視できず目を逸らす純


純「あの時はなんかこう……アドレナリンがドバーッと出たというか……。
そもそもああいうのはゆっくんにやってた昔の癖が出ただけで」

悠征「昔の癖?」

純「えと……昔、ゆっくんに命令して、それができたらご褒美みたいな、そういうごっこ遊びを」


目を泳がせて答える純に、悠征はわかりやすく不貞腐れ、拗ねた顔をする


悠征「なんだよ、それ。
佑月にはああいうこといっぱいしてたってこと?
そんで俺にはもうできないわけ?」

純「…………して、欲しいの?」

悠征「っ」


恐る恐る純が上目遣いで問いかけると、自分の発言の意味にようやく気付いた悠征が一気にカァッと顔を赤くする
やけにうるさい心臓の音が、羞恥心を鈍らせていくようだった
熱に浮かされた悠征は、ゆっくりと口を開く


悠征「……し……て、欲し、い」


羞恥心と葛藤しながら絞り出したようなその声にきゅんきゅんと胸が鳴るのと同時に、プツンと純の中で何かが切れたような音がした


純「いいよ、しよっか」

悠征「!?」


その言葉とともにドッと唐突に純が悠征の胸を力いっぱい押し、悠征の身体をベッドに倒す
驚く悠征をよそに純はそのお腹にまたがり、悠征を上から見下ろした
その妖艶な笑みが、悠征をゾクリとさせる

純はそのまま悠征の両腕を頭の上まで持っていく
そしてベッド横のサイドテーブルに置いてあった制服のネクタイを取り、しゅるりと悠征の腕に巻きつけて拘束した


悠征「な、なに———」

純「あの時とおんなじ。触ったらダメね」


純はそう言ってから、悠征の顎のライン、首、鎖骨を指でつうっとなぞっていった


悠征「〜〜〜っ」


ゾワゾワと顔を真っ赤にする悠征と、それをじっくりと見下ろす純


純「ふ、かわいい」


純の愛しいものを愛でるような熱っぽい声を聞いた悠征は耐え切れなくなり、縛られた両手を純の首にズボッとかけるように動かし、純の頭を自分の顔に引き寄せる


純「わっ」


突然の抵抗になす術もなく、純は鼻先が触れるほどの至近距離で悠征と見つめ合うことになる
悠征は余裕のない声で言葉を紡いだ


悠征「あの時と違って、俺、本気で純のこと好きだから。こんなことやられたら、我慢できねーよ」


一瞬面食らう純だが、すぐ妖艶に笑って


「……わるいこ」


そのままキス、暗転






◾️場面転換
とあるレンタルスタジオ

悠征と佑月が闇鍋を囲いながら配信をしている

パソコンには、永遠と星月のVtuberアバターが鍋を囲っている図の配信画面

その様子を別室で見守る純と理沙


永遠『んじゃ、今日の配信はここまで。
次のオフコラボはもっと優しめの企画用意するわ』

星月『闇鍋は正直2度とやりたくないかも』

永遠『戦犯どう考えてもお前だからな』

星月『永遠だって唐辛子死ぬほど入れただろ!』

永遠『不味くはしてねぇ!
星月のショートケーキがなければ絶対マシだった!』

星月『どっちが戦犯だったか後でアンケ取ります』

永遠『望むところだ』

星月『それじゃあ、みんな配信見てくれてありがとー!
またね〜!』


仲良くプロレスをしながら配信を切る2人


コメント『最高に楽しかった!』

コメント『またオフコラボ待ってます!』

コメント『(10000円の投げ銭)これで2人で美味しいもの食べて』

コメント『(5000円の投げ銭)てぇてぇありがとう』

コメント『お疲れ様〜!エバスタ最高!』


すごい勢いで流れるコメント、オフコラボは大盛況に終わった




◾️場面転換
そのままスタジオ
ぐつぐつと煮える鍋を囲む純、理沙、悠征、佑月
オフコラボが無事に終了した後、残った材料で普通の鍋を作り直し、その場で打ち上げを行っていた
4人は飲み物をそれぞれ飲み物を持ち、


佑月「それでは、オフコラボ大成功を祝して!
かんぱーい!」

純・理沙・悠征「乾杯!」


笑顔で乾杯をし、鍋パーティーを始めた


佑月「本当、2人ともありがとね!
企画から買い出しまで、めちゃくちゃ助かった!」


鍋を食べながら、純と理沙に声をかける佑月


純「全然!むしろ推しの企画に携われるとか、貴重な経験ありがとうございますって感じ」

理沙「あたしは本当、今日しか手伝ってないし。
お礼言われるほどのことでは」

佑月「そんなことないよ!
鍋作るの、理沙ちゃんいなかったら厳しかったって」


(回想)
闇鍋を作ると言う企画を純が理沙に話した際

理沙「闇鍋企画……って、あんたたち誰か料理できるの?」

純「ううん、誰も」

理沙「…………あたしも行く」不安すぎる

頭を抱えていた理沙
(回想終了)



理沙「まあ……そうかも」

佑月「でしょ?」

悠征「流石師匠、頼りになる」

理沙「だからそれやめなさいって」


冗談混じりの悠征に、本気で嫌がる素振りを見せる理沙
純はそれを見てにこにこしている


佑月「純ちゃんもイラスト素材本当にありがとね!」

純「これくらいでよければいくらでも描くよ」

佑月「ダメ、次はお金払わせて。
俺隅っこ先生推しイラストレーターだから。
本当はSNSに上がってるイラスト全部にお金振り込みたい」

純「ゆっくんがオタクみたいなこと言ってる……」

佑月「それくらい純ちゃんのイラストって素敵なんだって!
まず絵柄がどタイプだし、色使いも繊細で綺麗でしょ、細部まで衣装通りでこだわって描いてるなってわかるし」

悠征「近い、手を握るな」


純の手を握りながらイラストの良さを語り出した佑月を小突く悠征


佑月「なんだよー!別に良いじゃんか、手握るくらい幼馴染なんだから」

悠征「ふざけんな。ダメだ」

佑月「ウワッ心狭!何がスパダリだよ独占欲の塊じゃんか!」


そのまま小競り合いを始めた2人を横目に、口を開く理沙


理沙「……推しの普段の姿を自分だけが知ってるみたいなシチュ、めちゃめちゃ良いかもって思い始めた」

純「わかる。それを体現してる2人だよね。
エバスタいかがですか」

理沙「ちょっと興味湧いた」

純「えっ本当!?!?!?!?」

理沙「メインはワンステ夢小説にこのシチュ組み込めないかなと思ってるけど」

純「それでも嬉しい!!!
ぜひエバスタも見てください!!!」


この間、悠征と佑月の小競り合いも続いている


悠征「独占欲あって何が悪い」

佑月「1人を好きにならないって豪語してた癖に〜」

悠征「ぐっ……佑月だって、嘘告白とか趣味悪いことやっただろ」

佑月「嘘は嘘だけどさ、悠征がもしあの時なんも口挟んでこないくらいどうしようもないビビりだったら、何がなんでも奪ってやろうとは思ってたよ?」

悠征「はあ!?お前っ……本当はまだ好きなのか!?」

佑月「さあどうでしょう」


その喧嘩を全く聞いていない純と理沙


理沙「でもさ、推しも彼氏になったらちょっと見方変わるんじゃない?
クリスマスとかイベントごとも配信優先するしかないだろうし、彼女的にはそういうの嫌じゃないの?」

純「全ッッ然!だって推しの配信見れるならそれはそれで嬉しいもん」

理沙「あぁそう……でも純、最近全然エバスタ見てないよね。
前なんて学校でも時間があればずっと見てるくらいだったのに」

純「家では今でも時間あったらずっと見てるよ。
でも、学校ではやっぱりもっと見たいものができたからさ」

純(だって)


佑月との口論の末、立ち上がって純の方に歩いてきた悠征
そのまま、グッと純の肩を抱き、


悠征「純は俺のだから!」


と佑月に向かって言い放った
純は一瞬驚いた顔をするも、すぐに笑顔になって


純(推しの中の人があまりにも尊い!)




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