キミの隣は特別席

もう、隣に立って会場に入れないよ…

「帰りたい…」

小さい声で言った。

「えっ?何?」


「もう、帰りたい!」

「いきなりどうしたんだよ?」

慌てる優一初めて見た…でも…


「いいから帰りたいの!」

「わかった…」

そう言ってケータイを開いて、どこかに電話をかけ始めた。

「兄さん?1時間ほど抜けるから」

お兄さんか…迷惑かけてごめん…





暫く話して優一がケータイを閉じた。

「行こうか?」

そう言われて頷いた。

このまま家に帰ると怪しまれるよね?少し化粧崩れてるし…
絢の家に行こうかな…

「何があったか知らないけど…俺に何でも言えよ?」

優一の優しさが今は痛い…あたしと住む世界が違う…やっぱり佳苗みたいな子が優一に似合ってるよ…

「絢の家に泊まるから…」

優一にそう言って、絢にメールを送った。すぐにいいよのメールがきた。それから家に電話した。
その間、優一もどこかに電話をしていた。




ホテルを出ると杉本さんが運転する車が停まっていた。

「1人で大丈夫だよ…」

そう言うと、優一に睨まれた。

「駄目だ。マナの親に約束してるから」

と言い、あたしを車に押入れ優一も車に乗った。まもなく車が動き始めた。








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