ハルシャギク 禁じられた遊び
プロローグ
どんなに鮮烈だったとしても、記憶は記憶に過ぎない。
のちのち事実とは違うものを植えつけられたり、ゆがめられたりして、「誰かに作られた記憶」になることは珍しくもない。
私がはっきりと覚えているのは、ハルシャギクがきれいだったこと、熱を出して寝込んだこと、そしてユウちゃんの照れ笑いに心臓が跳ねたこと――くらいのものだった。
花の名前は後々祖母に教えてもらったので、後付けの記憶ともいえるし、熱を出したのも、実は「おふとんにねかされて、ずっとてんじょうを見ていた」という記憶に対する、母からの補足情報にすぎない。
ユウちゃんの照れ笑いだけが、当時6歳だった私だけの記憶だ。
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