鮮やかなもの
助け舟
時は流れて、夏。

「類(るい)くん、産まれそう!」

おしるしがきた。

「いよいよだね、ゆっこちゃん!」

「類くん、怖いよ…」

「俺もいるから、大丈夫」

類は出産に立ち会ってくれる。

そうして産まれた子どもは、とても可愛いとは言い難い、ガッツ●松に似ていた。

「ええ!?」

戸惑う優心(ゆうこ)に、

「新生児はそんなもんだよ」

冷静に言う類。

「このままこの顔はやばいよ。
女の子なのに…」

「大丈夫、大丈夫」

類は軽く受け流す。

子どもの名前は、たくさんの幸せに恵まれるように千幸(ちゆき)と類が名付けた。

入院中は看護師さんや助産師さんがいてくれたからまだ良かった。

地獄の日々が始まったのは、退院してからだ…。

2~3時間置きの授乳、オムツ替えでゆっくり寝る暇もない。
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