[書籍化、コミカライズ]稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ
2章
67.芋虫と餌じゃないのに
「……おはようございます?」
「ああ、おはよう。
腕の調子はどうだ?
よく眠れたか?」
「……ええ、腕も睡眠も問題ありませんわ。
お兄様はいかがです?」
「そうか、良かった。
私も眠れたよ。
朝食を取るところか。
邪魔してしまったな」
朝のご挨拶なんていつぶりかしら?
従妹で義妹のシエナでもないでしょうに、どうして早朝に突撃訪問をされたのかしら?
もしかして、しれっと先に行こうとしていたのがバレてる?
「ふふふ、いえ。
お兄様はもう朝食は済ませましたの?」
「いや。
手料理か?」
朝食を並べたテーブルに案内したら前のめりね。
仕方ないわ。
修繕をお約束しているもの。
ここは賄賂に食べ物を贈っておきましょう。
「ええ。
今日持って行くスパイスを使って焼いた羊肉のサンドイッチと緑豆と卵のスープですわ。
簡単なものですけれど、ご一緒にいかが?」
「サンドイッチにスパイス……。
いいのか?」
「もちろんでしてよ」
にっこりと微笑んでおきましょう。
と、思った途端……。
「お兄様、お待ちになって!」
バタン!と相変わらずの勢いでドアを開けたのは従妹で義妹のシエナよ。
まあまあ?
今日はピンクブラウンの髪が少しピンピンしているわ。
お兄様を追いかけてきたのかしら?
「シエナ、いつもそのように乱入しているのか?」
あら?
お兄様のお声が何だか低いわね。
朝はお声が出にくいもの。
ちょうどカモミールのハーブティーを淹れていたから、差し上げましょうか。
「そんな事よりも、お義姉様のお話ばかりをうかがわないで下さいませ!
私の話もお聞きに……」
「シエナ」
お兄様の声はもっと低くなってしまったけれど、お疲れなの?
先に茶葉を入れて蒸らしておいたティーポットに沸かしていた熱いお湯を注ぐ。
この時のカモミールのスッとする香りが好きなの。
カップを1つ取ってお兄様用に注ぐ。
「お義姉様、酷いわ!」
「まあまあ?
わざとではないのよ?」
「やっぱりお義姉様のせいなのね!」
朝からそんなに騒げるだなんて、若さかしら?
あら、そういえば私も16才だったわ。
若いわね、私。
「あらあら?
カップを割ったのはあなたよ?
お客様用のカップは今1つしかないの。
私専用のカップは嫌でしょう?」
「何の話よ!!」
「何って、あなたにお茶が出せないお話よ?
わざとではないの。
あなたにもお茶を淹れてあげたいけれど、少し前にあなたがお客様用のカップを割ってしまったでしょ?
でも飲みたかったらまた淹れてあげるわ。
邸から持ってらっしゃいな」
どうしたのかしら?
シエナのお顔が真っ赤になっていくわ?
風邪?
「何ですって!」
「シエナ!」
まあまあ?
お兄様も元気ねえ。
何だかお顔が険しいわ?
やっぱり喉の調子が悪いのかしら?
合同訓練の日なのに、悪化したら大変。
そう思いながらお兄様のカップをそっと差し出す。
ちなみに今日の私のは白の手作りマグカップよ。
青い図柄を入れているの。
雲のかかった満月印で、雲も満月もにこにこマーク。
ちなみにキャスちゃんのは9つの尻尾印。
マグカップと紅茶用のカップの2種類を聖獣ちゃん達の分だけ用意して、このカップには保護魔法をかけているの。
図柄入りはマグカップだけよ。
でも雲や尻尾は何故か芋虫や筍扱いされるし、満月は芋虫の餌だと思われるのよ。
他のもそんな感じで不評だったから、紅茶用のカップは既製品にしたわ。
解せないけれど、仕方ないわね。
なんて思いつつ、彼らに背中を向けて追加のスープとサンドイッチを用意するわ。
憎々しげで恨めしそうな視線を後頭部に感じるけれど、もちろん無視ね。
今日の私とお兄様は登校時間が早いもの。
「シエナ。
話は合同訓練から帰って聞く」
「お兄様……」
「お前がロブール家の公女であり、私の妹である事は変わらない。
行きなさい」
「……はい」
パタン。
初めてね。
ドアが閉まる音が静かだわ。
「邸からついて来てしまった。
すまない」
「ふふふ、かまいませんわ。
慣れていますもの」
「慣れ……そうか。
今度ティーセットをこちらに持ってくる。
保護魔法はかけておく」
「ふふふ、お気になさらないで」
「いや。
ただ虫の柄はないと思うんだが、花柄でいいか?」
「……それ、雲と満月でしてよ……」
「……空色や星をモチーフにしたものを贈ろう」
「……ふ、ふふ。
ありがとうございます?」
何故かしら?
後頭部にいたたまれない視線を感じるわ……。
「ああ、おはよう。
腕の調子はどうだ?
よく眠れたか?」
「……ええ、腕も睡眠も問題ありませんわ。
お兄様はいかがです?」
「そうか、良かった。
私も眠れたよ。
朝食を取るところか。
邪魔してしまったな」
朝のご挨拶なんていつぶりかしら?
従妹で義妹のシエナでもないでしょうに、どうして早朝に突撃訪問をされたのかしら?
もしかして、しれっと先に行こうとしていたのがバレてる?
「ふふふ、いえ。
お兄様はもう朝食は済ませましたの?」
「いや。
手料理か?」
朝食を並べたテーブルに案内したら前のめりね。
仕方ないわ。
修繕をお約束しているもの。
ここは賄賂に食べ物を贈っておきましょう。
「ええ。
今日持って行くスパイスを使って焼いた羊肉のサンドイッチと緑豆と卵のスープですわ。
簡単なものですけれど、ご一緒にいかが?」
「サンドイッチにスパイス……。
いいのか?」
「もちろんでしてよ」
にっこりと微笑んでおきましょう。
と、思った途端……。
「お兄様、お待ちになって!」
バタン!と相変わらずの勢いでドアを開けたのは従妹で義妹のシエナよ。
まあまあ?
今日はピンクブラウンの髪が少しピンピンしているわ。
お兄様を追いかけてきたのかしら?
「シエナ、いつもそのように乱入しているのか?」
あら?
お兄様のお声が何だか低いわね。
朝はお声が出にくいもの。
ちょうどカモミールのハーブティーを淹れていたから、差し上げましょうか。
「そんな事よりも、お義姉様のお話ばかりをうかがわないで下さいませ!
私の話もお聞きに……」
「シエナ」
お兄様の声はもっと低くなってしまったけれど、お疲れなの?
先に茶葉を入れて蒸らしておいたティーポットに沸かしていた熱いお湯を注ぐ。
この時のカモミールのスッとする香りが好きなの。
カップを1つ取ってお兄様用に注ぐ。
「お義姉様、酷いわ!」
「まあまあ?
わざとではないのよ?」
「やっぱりお義姉様のせいなのね!」
朝からそんなに騒げるだなんて、若さかしら?
あら、そういえば私も16才だったわ。
若いわね、私。
「あらあら?
カップを割ったのはあなたよ?
お客様用のカップは今1つしかないの。
私専用のカップは嫌でしょう?」
「何の話よ!!」
「何って、あなたにお茶が出せないお話よ?
わざとではないの。
あなたにもお茶を淹れてあげたいけれど、少し前にあなたがお客様用のカップを割ってしまったでしょ?
でも飲みたかったらまた淹れてあげるわ。
邸から持ってらっしゃいな」
どうしたのかしら?
シエナのお顔が真っ赤になっていくわ?
風邪?
「何ですって!」
「シエナ!」
まあまあ?
お兄様も元気ねえ。
何だかお顔が険しいわ?
やっぱり喉の調子が悪いのかしら?
合同訓練の日なのに、悪化したら大変。
そう思いながらお兄様のカップをそっと差し出す。
ちなみに今日の私のは白の手作りマグカップよ。
青い図柄を入れているの。
雲のかかった満月印で、雲も満月もにこにこマーク。
ちなみにキャスちゃんのは9つの尻尾印。
マグカップと紅茶用のカップの2種類を聖獣ちゃん達の分だけ用意して、このカップには保護魔法をかけているの。
図柄入りはマグカップだけよ。
でも雲や尻尾は何故か芋虫や筍扱いされるし、満月は芋虫の餌だと思われるのよ。
他のもそんな感じで不評だったから、紅茶用のカップは既製品にしたわ。
解せないけれど、仕方ないわね。
なんて思いつつ、彼らに背中を向けて追加のスープとサンドイッチを用意するわ。
憎々しげで恨めしそうな視線を後頭部に感じるけれど、もちろん無視ね。
今日の私とお兄様は登校時間が早いもの。
「シエナ。
話は合同訓練から帰って聞く」
「お兄様……」
「お前がロブール家の公女であり、私の妹である事は変わらない。
行きなさい」
「……はい」
パタン。
初めてね。
ドアが閉まる音が静かだわ。
「邸からついて来てしまった。
すまない」
「ふふふ、かまいませんわ。
慣れていますもの」
「慣れ……そうか。
今度ティーセットをこちらに持ってくる。
保護魔法はかけておく」
「ふふふ、お気になさらないで」
「いや。
ただ虫の柄はないと思うんだが、花柄でいいか?」
「……それ、雲と満月でしてよ……」
「……空色や星をモチーフにしたものを贈ろう」
「……ふ、ふふ。
ありがとうございます?」
何故かしら?
後頭部にいたたまれない視線を感じるわ……。