[書籍化、コミカライズ]稀代の悪女、三度目の人生で【無才無能】を楽しむ
75.青春と回路の修理
「どういうつもりだ。
状況がわかっていないのか」
お孫ちゃんは金髪ちゃんが精神感応魔法を解いてから、大きくため息を吐いたわ。
頭が痛そうに右手を顔に当てているのだけれど、大丈夫かしら?
偏頭痛?
激高したような声のトーンではもうないけれど、苛々しているのは継続しているみたい。
「状況って、いつもの訓練だろう」
「どう考えても何かが起こっているのに気づいていないのか。
彼らは貴重な戦力だ。
それなのに君達は……」
反発する家格君。
そんな家格君に更に苛立ちを感じている様子のお孫ちゃん。
そしてそんな2人の口論を尻目にオロオロしている金髪組。
あらあら、ある意味カオスね。
そんな4年生達だけれど、今は私、絶賛メンテナンス中なの。
他の3本のペグも針でオープン、魔導回路に魔力を流してショートしていた1本を除き、再びカチリと合わせ閉じて片づけ終わっているのよ。
ふふふ、仕事は手早く、正確にがポリシーなの。
グラウンドでご挨拶した時と違ってギスギスグループになっているけれど、作業が終わるまではそっとしておきましょうか。
喧嘩して深まる仲もあるわよね。
青春て素敵よ。
「くっ、公女は何であんな目で俺達を見ているんだ……」
「何だか幼い頃のお母様、いえ、お祖母様の眼差しに似ているわ……」
「「どうせならあの2人を止めて欲しい」」
あらあら、駄目よ。
何がどうせなのかわからないけれど、確かに四公公女の私ならあの2人に割って入れるでしょうね。
でもあなた達だって侯爵家の子供よ。
大丈夫、仲間にぶつかって青春なさいね。
「自分達のした事を棚に上げて公女に助けを求めるな。
恥を知れ」
「「も、申し訳ありません!」」
金髪組の救助信号は気づかないふりをすれば、お孫ちゃんの冷たい声が口撃したわ。
「ちっ、サブリーダーが偉そうにしないでもらおうか。
2人はリーダーで公子でもある俺の指示に従っただけだ」
「エンリケ公子!」
と思ったら、家格君が舌打ちして反発よ。
ふふふ、口では何だかんだ言っても、目下の2人を庇ったのはプラスポイントね。
お孫ちゃんはその言葉に更に怒りを上乗せしてしまったみたいだけれど。
なんてやり取りを、もちろんただ傍観しているわけではないのよ。
仕事は手早く、正確にがポリシーなの。
ふふふ、大事な事だから2度言ってみたわ。
それをバックミュージックに、書き込み用のペンを手に取ってちゃんと作業しているわ。
ペンの見た目はあちらの世界のシャープペンシルね。
カチ、と上の部分を押すと先からはシャープ芯ではなく魔法針が出てくるの。
針の素材や太さはその時々で違うし、稀にシャープペンシル本体を特殊な物に変える事もあるのだけれど、今回の針は裁縫に使うような針とベーシックな本体よ。
針に魔力を通しながら素材に魔導回路という名の傷を刻みつけつつ、必要な魔力や属性なんかを付与するわ。
「公女、変わりないか?」
俯いて作業する私の視界に、不意にガッシリとした冒険者らしい筋肉が窺える足が映ったわ。
身体強化して瞬足でも使ったのかしら?
平時のはずなのに、何か慌てたの?
そんな言葉をかけてくれたのもこの足も、もちろんうちのグループリーダーのラルフ君よ。
「あらあら?
何も変わらないわよ?」
まあまあ、顔を軽く上げると何だか心配顔ね。
やっぱりこの森とあの4年生メンバーの不釣り合いさに不安を持ったのかしら?
向こうからはサブリーダーのローレン君と眼鏡女子のカルティカちゃんが駆けてきたわ。
皆どうしてそんなに慌てているのかしら?
「大体、大公殿下の息女とはいえ君は侯爵家だろう!
一々四公家の俺に指図しないでもらおう!」
「いい加減、状況を理解しないか!」
まあ確かに上位貴族の上級生が激しく口論しているのは異常事態よね。
初めてのご挨拶の時の私への反応のように、お前と言わないだけまだ理性が働いているのかしらね?
「ふふふ、仕方ないわね」
うちのグループが不安になっているのなら、話は別ね。
とりあえず修理が必要なペグは2本中1本終わったし、残りのペグは後で修理しましょうか。
予備のペグがまだ何本かあるから、ひとまず問題は無いわ。
「公女」
鞄を持って立ち上がれば、珍しくラルフ君が私を止めるように声をかけて二の腕を掴まれてしまったわ。
「まあまあ、大丈夫よ」
きっともう出来上がっているもの。
そっと彼の手を安心させるようにポンポンと優しく叩けば、腕を離してくれたわ。
それでも心配なのかしら?
ラルフが私の後ろをついてくるわ。
状況がわかっていないのか」
お孫ちゃんは金髪ちゃんが精神感応魔法を解いてから、大きくため息を吐いたわ。
頭が痛そうに右手を顔に当てているのだけれど、大丈夫かしら?
偏頭痛?
激高したような声のトーンではもうないけれど、苛々しているのは継続しているみたい。
「状況って、いつもの訓練だろう」
「どう考えても何かが起こっているのに気づいていないのか。
彼らは貴重な戦力だ。
それなのに君達は……」
反発する家格君。
そんな家格君に更に苛立ちを感じている様子のお孫ちゃん。
そしてそんな2人の口論を尻目にオロオロしている金髪組。
あらあら、ある意味カオスね。
そんな4年生達だけれど、今は私、絶賛メンテナンス中なの。
他の3本のペグも針でオープン、魔導回路に魔力を流してショートしていた1本を除き、再びカチリと合わせ閉じて片づけ終わっているのよ。
ふふふ、仕事は手早く、正確にがポリシーなの。
グラウンドでご挨拶した時と違ってギスギスグループになっているけれど、作業が終わるまではそっとしておきましょうか。
喧嘩して深まる仲もあるわよね。
青春て素敵よ。
「くっ、公女は何であんな目で俺達を見ているんだ……」
「何だか幼い頃のお母様、いえ、お祖母様の眼差しに似ているわ……」
「「どうせならあの2人を止めて欲しい」」
あらあら、駄目よ。
何がどうせなのかわからないけれど、確かに四公公女の私ならあの2人に割って入れるでしょうね。
でもあなた達だって侯爵家の子供よ。
大丈夫、仲間にぶつかって青春なさいね。
「自分達のした事を棚に上げて公女に助けを求めるな。
恥を知れ」
「「も、申し訳ありません!」」
金髪組の救助信号は気づかないふりをすれば、お孫ちゃんの冷たい声が口撃したわ。
「ちっ、サブリーダーが偉そうにしないでもらおうか。
2人はリーダーで公子でもある俺の指示に従っただけだ」
「エンリケ公子!」
と思ったら、家格君が舌打ちして反発よ。
ふふふ、口では何だかんだ言っても、目下の2人を庇ったのはプラスポイントね。
お孫ちゃんはその言葉に更に怒りを上乗せしてしまったみたいだけれど。
なんてやり取りを、もちろんただ傍観しているわけではないのよ。
仕事は手早く、正確にがポリシーなの。
ふふふ、大事な事だから2度言ってみたわ。
それをバックミュージックに、書き込み用のペンを手に取ってちゃんと作業しているわ。
ペンの見た目はあちらの世界のシャープペンシルね。
カチ、と上の部分を押すと先からはシャープ芯ではなく魔法針が出てくるの。
針の素材や太さはその時々で違うし、稀にシャープペンシル本体を特殊な物に変える事もあるのだけれど、今回の針は裁縫に使うような針とベーシックな本体よ。
針に魔力を通しながら素材に魔導回路という名の傷を刻みつけつつ、必要な魔力や属性なんかを付与するわ。
「公女、変わりないか?」
俯いて作業する私の視界に、不意にガッシリとした冒険者らしい筋肉が窺える足が映ったわ。
身体強化して瞬足でも使ったのかしら?
平時のはずなのに、何か慌てたの?
そんな言葉をかけてくれたのもこの足も、もちろんうちのグループリーダーのラルフ君よ。
「あらあら?
何も変わらないわよ?」
まあまあ、顔を軽く上げると何だか心配顔ね。
やっぱりこの森とあの4年生メンバーの不釣り合いさに不安を持ったのかしら?
向こうからはサブリーダーのローレン君と眼鏡女子のカルティカちゃんが駆けてきたわ。
皆どうしてそんなに慌てているのかしら?
「大体、大公殿下の息女とはいえ君は侯爵家だろう!
一々四公家の俺に指図しないでもらおう!」
「いい加減、状況を理解しないか!」
まあ確かに上位貴族の上級生が激しく口論しているのは異常事態よね。
初めてのご挨拶の時の私への反応のように、お前と言わないだけまだ理性が働いているのかしらね?
「ふふふ、仕方ないわね」
うちのグループが不安になっているのなら、話は別ね。
とりあえず修理が必要なペグは2本中1本終わったし、残りのペグは後で修理しましょうか。
予備のペグがまだ何本かあるから、ひとまず問題は無いわ。
「公女」
鞄を持って立ち上がれば、珍しくラルフ君が私を止めるように声をかけて二の腕を掴まれてしまったわ。
「まあまあ、大丈夫よ」
きっともう出来上がっているもの。
そっと彼の手を安心させるようにポンポンと優しく叩けば、腕を離してくれたわ。
それでも心配なのかしら?
ラルフが私の後ろをついてくるわ。