凍りついた私は腹黒い王子殿下の執着愛に溶かされる
「氷漬けになった令嬢など嫁の貰い手がないだろう。俺が責任をとるのが当然だ」
 殿下がきりっと断言する。
 思いがけず胸がどきんと鳴って、私は慌てた。

 今までは予想外のことで気にする余裕などなかったけど、改めて見てみると、殿下はとても美形だ。真っ直ぐな眉に、涼やかな目元。淡い金の髪が頬を縁取る様は高名な画家ですら描くことは不可能ではないかと思う。まさに神にしか造形できない美がそこにはあった。

「年齢差はもうないだろう? 俺は君の年齢を越した。書類上はともかく、身体的な年齢は俺の方が三つも上だ」
 ということは、本当は私は三十歳のはずで、だけど体は十七歳のまま。殿下は二十歳ということになる。

「医師によれば健康状態も問題なしだ。子を成すこともできるだろう」
「子どもって!」
 私は顔を赤くした。

「なにを想像した?」
 殿下の弧を描く目が、面白そうに私を見ている。

「お聞きにならないでください」
 私は両手で顔を覆った。

「余計に聞きたくなる。俺との夜を考えてくれた?」
 彼は私の肩を抱き寄せ、耳に触れんばかりの距離で囁く。
 私の鼓動は早くなるばかりだ。

「婚約してるんだから、いいよね」
 殿下は私の耳に口づけ、耳たぶを口に含んだ。背筋がぞくぞくっと甘く震えた。

「おやめください!」
 身をよじって逃げようとするが、殿下の力が強くて離れられない。
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