凍りついた私は腹黒い王子殿下の執着愛に溶かされる
その夜、私はぐったりと長椅子に横たわった。
陛下との謁見はとても疲れた。
母が殿下の乳母をしていたので、お目にかかったことはなんどかある。
久しぶりにお会いする陛下は記憶以上に貫録があって、気圧されてしまった。
陛下からは殿下との結婚の礼を言われて、もうこれ断れないやつじゃん、と私は観念した。
そうして、王宮の一室、殿下の部屋の隣に私の部屋を用意された。
殿下の部屋ほどではないけれど、とても豪華だ。白い壁には植物をモチーフにした同色の模様があり、ゴブラン織りのカーテンはピンクの薔薇が描かれている。
絨毯は毛足が長くふかふかで、天井にはこぶりとはいえシャンデリアもあった。
だけど、私はそれらを見てもなにもときめかず、知らない間に過ぎた時間を思った。
冷凍されていた十三年は、私にはないも同然だ。
昨日まで弟のようにかわいがっていた男の子が急に大人になって結婚を申し込んできた。戸惑うなというほうが無理だと思う。
結婚を申し込まれただけじゃなくて。
昼間のことを思い出して、顔がかーっと熱くなる。
押し倒されちゃった。あのときもし侍従が来なかったら、私は殿下に……。
その先を考えられなくて、私はただ赤くなる。経験がないから、どうなるのかよくわからない。あのとき感じた甘いぞくぞくした感覚をもう一度味わいたくなって、そんな自分が恥ずかしかった。
いったん忘れよう。これからのこと考えなくちゃ。
そう思ったときだった。
がちゃ、とどこかのドアが開く音がして、そちらを見ると、殿下が立っていた。