凍りついた私は腹黒い王子殿下の執着愛に溶かされる
 あのかわいかった殿下が、こんなに立派になっているなんて。そして、私の婚約者になっただなんて。
「ん……」
 殿下の喉から声が漏れた。

 ゆっくりと目が開き、ぼんやりと私を見る。

「おはよ。起きてたんだ」
 寝ぼけた声に、きゅんとした。無防備な姿に、ときめきが止められない。

「おはようございます」
「よく眠れた?」

「はい」
「うそ。目の下にクマがある」

「え!?」
 思わず顔を押さえると、殿下がくすくすと笑った。

 体を起こした殿下は私の頬にキスをする。

「今日は朝議以外の仕事を休みにしてあるんだ。一緒にでかけよう」
「はい」
 私はどきどきとうつむいた。





 殿下は私と朝食をとったあと、朝議に出席した。
 その後、一緒に馬車に乗る。
 到着して馬車を降りると、彼は私を横抱きに抱いた。

「殿下!?」
「目をつむって。驚かせたいから」
 私はおとなしく目を閉じて殿下に揺られた。
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