凍りついた私は腹黒い王子殿下の執着愛に溶かされる
「え?」
 まさか、まさか?
「お、お許しを」
 私は慌てて回りを見た。

 野外でなんて、そんなはしたないこと。いつ従者が追いつくかわからないのに。

「誰も見てないよ」
「ですが」

「今回も許したら、俺ばっか許すはめになって、ずるくない?」
「ですが、こんなところで……お願いです。虐めないでください」
 私が彼を見上げると、殿下は大きくため息をついた。

「そんな目で見られると、よけいに虐めたくなる」
 彼はまた私の唇を奪う。
 ひとしきり味わうようにキスをしたのち、

「夜までまたお預けか」
 不満そうに彼はつぶやく。

「だが、今夜は必ず。いいね?」
 有無を言わせない口調に、私はうなずいた。

 今夜までに覚悟を決めないと。
 私はそっと彼を窺う。
 彼の上気した顔が色っぽくて、私はすぐに目をそらした。
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