凍りついた私は腹黒い王子殿下の執着愛に溶かされる
 その後、私は殿下の十歳上にも関わらず学友の名誉を得た。実際は世話係なのだけど。
 弟も同様に学友としての名誉を得て勉強に励んだ。

 不遜を承知で言えば、私は殿下を弟のように思っていた。
 母も心のどこかで第二の息子のように思っているようだった。

 私と弟は光栄にも殿下と仲良く過ごし、侯爵家は再び栄える兆しを見せていた。

***

 私が十七歳、殿下が七歳になったときのことだった。
 その日は突き抜けるような青空が気持ちよくて、殿下と二人で庭園を散歩していた。

 咲き誇る薔薇の香りはむせるほどで、中でもピンクの薔薇が可憐かつ豪奢だ。

 薔薇に囲まれて歩く殿下はまさしく王族といった風情。淡い金髪に澄んだアクアブルーの瞳、白磁のような滑らかな肌。すでに美男子として評判が高い彼は、将来、たくさんの女性を泣かせることになるのかもしれない。

 殿下はふと立ち止まり、私は並んで待った。
 殿下は一輪を選んで手にすると呪文を唱えた。薔薇の茎がスパッと茎が切れる。

 魔法だ、とすぐにわかった。
 殿下はたぐいまれな魔力の持ち主で、どんな魔法でもすぐに習得したという。
 この国で魔法を使えるものは稀で、王族ならば、なおさら貴重な存在だった。

 殿下は私の前にまわると、薔薇をすっと私に差し出した。

「私に? ありがとうございます」
 私が受け取ると、殿下はその手を掴んだ。
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