凍りついた私は腹黒い王子殿下の執着愛に溶かされる
「恐れながら、弟のようにお慕いしております」
「弟かよ」
 殿下は不満そうに唇をとがらせる。

「年齢の問題はな、解決法を考えてあるんだ。最終手段だけど。どうあっても結婚するからな」
「お気持ち、ありがたく存じます」
 私は頭を下げた。

「ですが私も近々、お見合いがございます。殿下とはもうお会いできなくなるでしょう」
 それは少し寂しい。だけど仕方のないことだ。

「断れよ」
「両親の立場を考えると、断るなんてできません」

 結婚は私一人の問題ではない。両家の思惑があって、だけど両親は私の幸せも考えた上で相手を探してくれた。それを知っているから、断るなんてできない。

「俺は王子だぞ! 命令に逆らうのか!」
「王族であればこそ、わがままを命令にしてはなりません」
 私がたしなめると、殿下はむっとしたようだった。

「こうなったら最終手段だ」
 殿下が言う。

「なにをなさるのですか?」
 私はたずねる。

「ミネリア、その薔薇を胸の前に両手で持って」
 私は首をかしげながらそれに従った。

「こうですか?」
「そう、それでちょっと微笑んで」

 私は疑問に思いながら微笑した。意識して微笑むなんて、変な笑顔になってるに違いないけど。
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