凍りついた私は腹黒い王子殿下の執着愛に溶かされる
「そのまま動くなよ」
 殿下はそう言うと、私に両手を向けて呪文を唱える。
 冷たい風が吹いた、と思った直後、私の意識は消えた。

***

 体が温かくなってきた。
 それとともに、ぼんやりと意識が浮上する感覚があった。

 なんだか長いこと眠っていた気がする。
 そうして、ああ、全身がなぜだかずぶぬれになっている感じがする。

 まぶたが重くて、目を開ける気力もわかない。
 まだ眠っていたい。

 そう思う私の唇に、温かいなにかが触れた。
 なんだろう。

 仕方なく目を開けると、誰かの顔のドアップがあった。
 次の瞬間、キスされているのだと気が付いた。

 なに!? 誰!?
 私は混乱した。

 顔を離した彼は、優しく微笑して私を見ている。
 やわらかな金髪にアクアブルーの瞳が美しい。衣装の装飾からして、かなり身分の高い人だとわかった。

「やっぱりお姫様はキスで目覚めるんだね」
 低い声が私の耳に届く。

 私は棺のようなものの中にいた。ガラス製のようで、周囲には薔薇の花びらがしきつめられている。
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