凍りついた私は腹黒い王子殿下の執着愛に溶かされる
 半身を起こそうとすると、彼が支えてくれた。
 体の上にあったらしきピンクのバラが棺の中に落ちた。

 華やかに装飾されたその部屋には見覚えがあった。第二王子殿下の私室だ。だが、どうしてこの場にこの男性がいるのだろう。王宮では見たことがない。

「ここは……?」
「私の部屋だよ、ミネリア」

「第二王子殿下のお部屋では……」
「私が第二王子殿下だよ」
 おどけたように、彼は言う。

「御冗談を」
 殿下は七歳でいらっしゃる。このような立派な青年ではない。

「あれから十三年がたったんだ」
 彼の言葉に、私はただ首をかしげた。





 ガラスの棺から出た私は、自称王子のはからいでまずは女医に体を診てもらった。
 異常なしということで湯あみをさせてもらい、用意されたドレスを着た。

「よくぞご無事で」
 メイドの一人が涙ぐむのを見て、私はまた首をかしげた。

 メイドに案内されて、再び殿下の私室へ行く。
 そこには先ほどの青年とともに、私の両親がいた。
 なんだかやけに老けて見えた。もう一人、両親の面影のある青年もいる。

「ミネリア!」
 お母様が駆け寄り、私を抱きしめた。
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