凍りついた私は腹黒い王子殿下の執着愛に溶かされる
 殿下は私の隣に座り直した。
 思わず距離をとろうとした私の手を殿下がつかむ。

「逃げないで」
「ですが」

 私にとっては殿下は七歳のままで、目の前の青年が殿下だと言われても戸惑いしかない。

 殿下は私の手を持ち上げ、口づける。
 どきっとした。私の顔が赤くなるのを見て、殿下がくすりと笑う。

「ちょっとは意識してくれた?」
「な、なにをおっしゃいますか」
 私はどきどきしながら答える。

 そういえば、さきほどは彼にキスされていた。抵抗できない状態で、ひどくない?

「俺が魔法を暴発させたことで、隣国の王女との結婚はなくなった。危険な王子と結婚させる気にはならなかったんだろう。同じ理由で縁談が来なくなった」

 自称が「私」から「俺」になったのは、二人きりになったからだろうか。

 私は過ぎた年月を思う。殿下が公の場で自分を「俺」ではなく「私」と言うところにちょっと切なくなった。大人になっていく過程を見守れなかった寂しさがある。

「氷漬けになったことで君の縁談はなくなった。見合い相手だった男は別の女性と結婚している」
「そうですか」

 その男性とは一度も会ったことはない。結婚したと言われても感傷すらわかなかった。

「解氷する前に、我が両親にも君のご両親にも許可を得た。君が蘇生したら俺と結婚する、と」
「ですが……」
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