「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 どちらかと言うとカッコいいというより綺麗という形容があてはまる顔立ちで、切れ長の二重を縁取る睫毛は長く美しい。

 筋の通った高い鼻と形のいい薄い唇は男性的で、額を出したアップバングの黒髪は色気を感じさせた。

 背は百八十センチを超しているだろうか。百五十三センチの私では、ヒールのある靴を履いてもかなり見上げる形になる。

 モデルのような体型は容姿と相まって隙のない完璧さがあり、少し距離を置きたくなるほどのカッコよさだ。

 唾をごくりと飲む。

 ここまでパーフェクトな人に、私は人生で一度しか出会っていない。

「巧さん、ですか?」

 頭に浮かんだ名前を思いきって口にした途端、彼は引きしめていた表情をふっと和らげた。

「そうだよ。久しぶり」

「お久しぶりです。たぶん、私が大学生の頃以来ですよね」

「もうそんなに経つのか」

 懐かしさを感じたのは一瞬で、なんともいえない緊張感に包まれた。

 五歳年上の彼、早戸巧(はやとたくみ)は、弁護士の父が後見人になった人物で、高校三年生の頃に両親を交通事故で亡くしている。ひき逃げで、犯人はいまだに捕まっていない。

 当時小学生だった私は子ども心ながらに彼を心配して気にかけていた。

 最後に会ったのは私が大学三年生で、そこで巧さんが警察官になっていると知った。
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