「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「シンプルに、雑炊にしよう」

「いいですね。久しぶりに食べたいです」

 巧さんがどんな具材を使うのか楽しみだ。

「三十分後くらいにきて。こなかったら呼びに行く」

 巧さんがリビングへ入ってから、ひとり廊下で息をつく。鼓動は速いままで、自分でもその理由が分からない。

 きっと微熱があるからだよね。さっさとシャワーを浴びよう。

 洗面所に入って脱いだ服を洗濯機に入れようとして、さーっと血の気が引いた。薄ピンク色のブラジャーを洗濯機の上に脱ぎ捨てたままだったからだ。

 脱いでいる途中で巧さんが帰宅したから慌てていて、まったく意識が向いていなかった。

 ……これ、絶対に見たよね。

 だから手を洗っている時におかしな態度だったんだ。

「めちゃくちゃ恥ずかしい……」

 自分にしか聞こえない囁き声をこぼし、両手で顔を覆う。

 たまに巧さんが洗濯をしてくれる時があったのだが、そういう時は洗濯ネットに入っているものは触らないでほしいとお願いしていた。干す時は間借りしている自分の部屋だし、だから同居していても下着を見られたことはなかった。

 穴があったら入りたい。

 しかも寝苦しいからと一日中ナイトブラを着用していたので、色気もなにもあったものじゃない。
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