「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 インテリアやファッションにこだわりはあっても、自分だけしか目にしないくたびれた下着はどうでもよくて、もう随分と買い替えていない。

 結婚するまでに新調しよう……。夫婦になってこの先ずっと一緒に生活するなら、ずっと下着を隠すのは無理があるだろうし。

 シャワーを浴びて身体はさっぱりしても、さっきの出来事は心に引っかかったままだった。

 リビングには美味しそうな匂いと熱気が漂っていて、自分以外の存在が部屋にあるというだけで安心でき、癒される。

「できたところだから、座って待ってて」

 テーブルにはすでに鍋敷きとお茶が入ったグラスが置かれていた。ダイニングチェアに腰掛けて内心わくわくしながら料理を待つ。

 休日の朝食に何度か巧さんに作ってもらったが夕食は初めて。

 巧さんが運んできた漆黒の器から湯気が上がっていて、目の前に置かれた瞬間すぐに覗き込む。

 ふんわりとした卵でとじてあり、鮭とネギがのっている。

「美味しそう!」

 思わず歓声を上げる。

「熱いから火傷しないように、ゆっくり食べて」

「はーい」

 れんげを握って雑炊をひとすくいする。ふーふーと息を吹きかけて少し冷ました後かぶりつく。

「んっ!」

 予想と違った味に驚いて、目を大きくしながら巧さんを見つめる。
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