「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「大丈夫か?」

 火傷したと思ったのか、巧さんはグラスを私の手元にコースターごとスライドさせた。それを手で『大丈夫』と表して、ご飯を飲み込んでから口を開く。

「梅が入ってる?」

「そう。もしかして苦手だった?」

 首を左右にぶんぶんと振った。

「大好きです。鮭に梅を合わせる発想がなかったので、びっくりして。めちゃくちゃ美味しいです。巧さん天才ですね」

 塩味がいいアクセントになっていて食欲がますますそそられる。

 巧さんは頬を緩めて小さく笑った。

 誰かの笑顔というのは、心を和ませて元気にさせる効能があると言われている。巧さんの控えめな笑顔は世間一般では満面の笑みとは呼べないかもしれないけれど、控えめで優しくて、私はとても好きだ。

「朝から食欲が凄いんです。ずっとなにか食べていた気がする」

「風邪には大食、熱には絶食と言う言葉があるけど、美月ちゃんにはあてはまらなかったな」

「へ? そんな言い伝えあるんですか?」

 初めて耳にした。さすが、巧さんは物知りだ。
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