「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「食べると体温が上がる仕組みから、発熱時は食べないようにする。逆に風邪は身体が冷えるからなると昔は思われていたから」

「なるほど」

 説明を受けながらも食べる手は止めなかった。最後のひと口まで雑炊をしっかりと味わい、あっという間に完食した。

「林檎があったよな。食べるか?」

「食べます」

 自分の器に私のも重ねてシンクまで運んでくれた背中を見守る。キッチンに立つ巧さんは絵になっていて、改めてカッコいい人だと見惚れた。

 最近は毎日あたり前に過ごしていたから実感が薄れていたけれど、ここまで容姿端麗でスタイルのいい人って日常でお目にかかれない。しかも性格も抜群にいい。

 こんな素敵な男性と結婚するのか。

 巧さんが多忙なのと私に精神的な余裕がなかったせいで、結婚についてあの日以来話し合っていない。だから、やっぱり契約結婚なんて止めておこうって言われる可能性もある。

 夫婦という特別な関係になる予定でいるのにまだなにも始まっていないふたりなので、これについて考えようとすると頭がバグを起こしたように正しく機能しない。現実逃避とはまた違うのだけれど。
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