「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「もし明日体調がよくなっていても、家事はやらないように」

 ここは素直に甘えよう。こくりと頷いて、意を決して質問する。

「巧さん今日帰りが早かったですけど、もしかして気にして、切り上げてくれました?」

 自意識過剰さを口にするのが気恥ずかしかったけれど、巧さんの帰宅後からずっと消化不良のように胸に残っていた疑問なので、思い切って聞いてみた。

「たまたま業務が落ち着いていて、定時で上がれたんだ」

「本当に?」

 激務じゃなかったのならいいことだ。でも昨日まで日付が変わる直前に帰宅していたのに、急に楽になるとはどうしても思えない。

 返事をする気はないようで、巧さんは空になった皿とフォークを片付ける。至れり尽くせりで、ずっと甘えっぱなしだ。

「巧さん、いつも助けてくれて、ありがとうございます」

 胸が痛くなるほど突き上げてくる幸福感の大きさを、目に見える形にして巧さんに伝えられたらいいのに。

 できなくても、感謝の言葉は届いてほしい。
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