「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました

――巧side




 両親を事故で亡くした時、俺も後を追いたいと何度も思ったし、生きている意味がないと絶望していた。

 契約結婚という割り切った関係なら、俺になにかあっても美月ちゃんは死にたくなるほど悲しんだりしないはず。

 妊娠しづらいことでパートナーに迷惑をかけると思っている様子だったが、それに関しても美月ちゃんが気に揉む必要はなくなる。そもそも俺は――。

 過去の記憶が津波のように押し寄せてきて、水面から顔を出すように急いで息継ぎをした。

 ずっとひとりで生きていく覚悟は決めていた。それでもどこかで寂しさを感じていたのは事実で、美月ちゃんと過ごしているうちに甘えが出てしまった。

 情けない。でも、これこそが本来の自分なのだと久々に思い出した。

 僅かな時間を共にしただけで、赤の他人にこんなにも心を許してしまうのは人生で二度目。それも憲明さんと美月ちゃんという親子に。これもなにかの導きなのか……。

「巧さん、うちへの道覚えているんですね」

 声を掛けられて、巡らせていた思考を意識の外へ追いやった。

 俺が運転する車の助手席に座る美月ちゃんは、袖や裾の部分がひらひらと揺れる涼しげなミントグリーンのワンピースを着ている。

 髪を後ろでまとめている姿とあいまって、いつもとは雰囲気ががらりと変わって新鮮だ。美月ちゃんは美人なので、なにを着ても似合う。
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