「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
　都内の静かな落ち着いた場所に建つ飛島家は、ごく一般的な一軒家だ。

　以前憲明さんが子育てしやすい環境を重視したと語っていた横顔が脳裏をかすめ、その本人がもう住んでいない現状にやるせない想いに駆られる。

　駐車場に車を停めていると玄関から聡子さんが出てきた。晴れ渡った青空から降り注ぐ光を受ける聡子さんの顔は青白い。

　美月ちゃんも色白なので元々の顔色なのかもしれないが、少し心配になる。

　日焼けをしないくらい外出はしないのだろうか。

「ご無沙汰しております」

　門扉を抜けて玄関に入る前にお辞儀をすると、聡子さんは目を弓なりに細めて笑った。儚げで、美月ちゃんに似ていて透き通るような美しさがある。

　憲明さんはこの笑顔を守りたいと思っていたのだろうな。

「本当に久しぶりね。元気そうでよかった」

　入って、というジェスチャーをされたので玄関の中へ足を踏み入れる。憲明さんが後見人になってくれた高校三年生の頃は度々お邪魔していたけれど、大学生になってからは玄関までしか入っていない。

　懐かしさが胸をじんわりと温かくも切なくもさせた。
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