「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 聡子さんの持つグラスに美月ちゃんがビールを注ぐのを黙って眺めていると、聡子さんがぽつりと呟いた。

「憲明さんがお酒好きだから、晩酌に付き合っているうちに、私も飲む習慣ができたの」

 触れてはいけない話題だったかもしれない。

「しかもお母さんの方が強いんだよね」

 一瞬言葉を詰まらせた俺をフォローする形で、美月ちゃんが会話を引き取ってくれた。

 ありがたい。こうして相手の表情や声音から、気持ちを察することができるところを尊敬している。

「美月は普段飲まないけど、強いのか?」

「え?」

 お化けでも見たような顔をされて、寿司に伸ばそうとしていた箸を止めた。聡子さんは先ほど見せた哀愁のある表情を引っ込めて、真剣に次に食べる寿司を選んでいる。

 そういえば伝え忘れていた。聡子さんの目にふたりが仲よくやっているように映るように、呼び捨てにすると。

「……わりと飲めますよ」

 頑張って平静に努めようとしているのがありありと伝わってきて、俺のせいで困らせているというのに、健気な姿が可愛らしいと思ってしまった。

 案外しっくりくるし、淑女の美月には呼び捨ての方が似合っている気がする。
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