「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「このあとの予定は? 時間はあるか?」

「特に予定は入っていないですけど……」

 聞かれたままに答えると、巧さんは数秒目を伏せてからゆっくりと私に焦点をあてた。

「仕事でこのホテルに滞在しているんだ。二時間ほどで用事を片付けるから、部屋で待っていて。送っていく」

「いえ、そんなご迷惑おかけできません!」

 顔の前で手を振って大袈裟すぎるくらいの反応でお断りをした。

「こんな状態で、美月ちゃんをひとりで帰すなんてできない」

「大丈夫ですよ。もう大人ですから」

 苦笑いがこぼれた。きっと彼の中で私はまだ年下の女の子なのだ。

「そう思っているのは案外自分だけだったりする」

 温度のない冷静な声だ。どう受け止めていいのか分からない複雑な思いが全身に広がったが、確かにそうだと納得する自分もいる。

 陽平の二股に気づかず、交際して一年以上が経った自分の誕生日をホテルレストランで祝うというから、特別な言葉をもらえるかもと期待していたほどなのだから。
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