「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 企画案の精査をしていると、打ち合わせのため会議室へ移動しようとしている部長が私のところに寄り道をして声を掛けた。

「飛島さん。これ、任せてもいい?」

 渡された書類に目を通すと、商品計画を組み立てた資料だった。作成したのは陽平と長屋さんで、これを進めていくならバイヤーと直接のやり取りが必要になる。

 一瞬、どうして私に……と困惑したが、その思考自体が間違っているとすぐに自分を叱咤した。

 べつの人間でもできる業務だけれど、私だってあたり前にできるし、企画担当の私がやるべきものだ。

「分かりました」

 はっきりとした声で返答すると部長はにっこり笑って片手を上げた。『よろしく頼むよ』の意味だ。信頼の証だと思う。

 部長や麻美みたいに応援してくれている人だっているのだから、まずは私が強くならなければ。これを機に現状を変えたい。

 強く鼓舞したところで、数席離れたデスクの同僚女性がぱっと顔を上げて私を見た。視線が合い、心臓がドクンと嫌な音を立てる。

 同年代の彼女は陽平の肩を持っており、あからさまに私へつらく当たるひとり。仕事ができ、負けん気が強いので、『美月をライバル視しているだけだよ』と麻美は言っていたけれど、理由はなんにせよ冷たくされるのは堪える。
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