「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
この週は怒涛の忙しさだった。
陽平は、これまで避けていた私が話しかけると驚いた表情をしたのは一瞬で、その後はなにもなかったかのように今まで通り接してきた。
勘違いとはいえ陽平のことならなんでも知っていると思っていたのに、宇宙人と接しているようだった。
私たちが再び接点を持つようになったことで好奇の目に晒されはしたが、これまでとは違って前に向かって進んでいるという自信を持てたからさほど気にならなかった。
仕事でのストレスが激減したおかげでプライベートでの時間に集中できるようになり、仕事の休憩時間や家にいる時間を利用して、遅れを取り戻すかのような形で様々な手続きをした。
九月の第一土曜日に私のマンションから巧さん宅へ荷物を運ぶ手配をしていたので、指輪を選びにジュエリーショップへ出掛けたのは十六時を回ってからだった。
「遅くなってすみません」
「ふたりのことなんだから、謝るのは違うんじゃないか」
はっとして、隣に立つ巧さんを見上げる。
引っ越しを無意識にまだ自分だけの物事として捉えていた。
「そうですね」
巧さんは平然としていて、ただ正しいことを言っただけという表情だ。