「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「婚約指輪と結婚指輪がセットになっているものにしようと考えていたけど、揃えない方が選択の幅が広がるな」

 事前にいろいろ調べてくれたみたいだ。

「巧さんはどういったデザインが好みですか? 巧さんは指が長くて綺麗だから、細いリングが似合いそう……」

 ショーケースの中にずらりと並ぶキラキラ光る指輪を覗き込む。

「男性側の指輪はデザインがシンプルで似通っているし、俺の希望は取り入れなくていい」

 私が気に入った指輪に決めることで巧さんは満足するのだろうし、巧さんの考えは分かる。でも、胸の中を掻き回されているようなぐちゃぐちゃした感情が沸き起こった。

「ふたりのことなのに?」

 引っ越し作業について指摘された同じ台詞を使ってみると、巧さんは珍しく驚いた感情を顔に滲ませた。

「悪い。そうだよな。お互いが気に入る指輪を選ぼう」

 私の想いを受け止めてくれて嬉しい。自然と頬が緩んで、ふふっと笑った。

 巧さんからの視線を感じて首を傾げる。

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもない」

 生意気な口を利いたから面食らったのかもしれない。

 でも夫婦になるのだから配慮はしても遠慮はしないようにしなければ、どこかでひずみが生まれる。

 まあ、何故か巧さんに対しては気を遣いすぎない自分がいるから、わざわざ意識する必要はないのだけれど。
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