「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「これ可愛い」

 目を引いた指輪を指さす。

「すみません。見せてもらっていいですか」

 すかさず巧さんが店員を呼んで、ショーケースから出してもらった。

 V字になっている曲線で、婚約指輪は中心に大粒のダイアモンドがある。女性の結婚指輪はV字の右横に小さなダイアモンドが埋め込まれていて、男性のものにはついていない。

 ただV字のフォルムが美しく宝石の輝きがなくても存在感があり、なによりさり気ないお洒落こそが巧さんのよさを際立たせるので、
この指輪はすごく似合っていると感じる。

「どう思います?」

「うん、いいね。真っ直ぐなものより、曲線があった方がいいと思っていたから」

 ちゃんと自分の好みも伝えた上で共感を示しているから、私に気を遣っているわけではないはずだ。

「それならこれに決めちゃっていいですか?」

「他に見なくていいのか?」

「はい。選択肢が多くて悩みそうな時は、最初にいいと思ったものが結局一番いいという、自分なりにものを選ぶときの決め事にしているんです」

 巧さんは興味深そうに頷いた。

「選択肢を増やさなければ、後からあっちの方がよかったかも、という無駄な感情も生まれないしな」

「無駄って」

 言い方が少々雑で笑ってしまう。

 巧さんの言う通り、こだわりが強いくせに優柔不断な私にとってこの買い物の仕方は理に適っているのだ。
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