「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「あ、えっと」

 巧さんは内心狼狽えている私に代わって画面をスライドさせ、店名や場所を確認した。

「ここか」

 それから店に連絡をして予約を取るまで、無駄なく流れるような所作だった。

「少し早いけど行くか」

「お昼が適当だったし、お腹がぺこぺこです」

 荷物の搬入作業と荷解きがあったので、コンビニエンスストアで購入したサンドイッチしか食べていない。巧さんも似たような感じだ。

「沢山食べよう」

 ふっと息を吐くように笑った巧さんを思わず凝視する。

「そんなには食べられないか?」

「あっ、いや……なんでもない時に笑うのが、珍しいなと思って」

「ぺこぺこって言い方が可愛かったから」

 心臓が胸の外に飛び出しそうなほど跳ねた。
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