「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 思考は正常に働かず、返す言葉が浮かばなくて気持ちを誤魔化すように微笑む。

 巧さんはスマートフォンをスラックスのポケットにしまい、脈絡なく私の手を掴んだ。

 目を大きく開いて巧さんを見る。

「人が多いし、ぶつかったり、はぐれると困るだろう」

 こくこくと首を上下に動かし、歩き出した巧さんに合わせて一歩を踏み出す。

 ジュエリーショップがマンションから近かったのと、コインパーキングに停めづらい場所というのもあり電車でここまできた。

 車移動が多いため、こうして並んで歩く機会はほとんどない。

 私の歩幅に合わせて歩く巧さんの優しさを感じて、胸にしっとりとした温もりが湧く。そしてそれ以上に、手のひらから伝わる巧さんの体温に安心する。

 ああ、好きなんだなって、ひとつの名前のついた感情がすとんっと胸に落ちた。

 人間性に惹かれ、人として好きな想いはずっとあった。でも男性として、恋をする、愛を注ぎたい対象としては見られていなかった。

 いつからだったのか自分でも分からないけれど、再会してから時間をかけて育っていたのだと思う。
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