「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 質問攻めを覚悟して迎えた月曜日、麻美は予想の斜め上の態度だった。

 お昼休みを利用して会社近くのレストランへランチに出掛けた。いつもは行き当たりばったりで外食するのだが、今日は確実に時間を確保できるようにと、わざわざ予約を入れてくれていた。

「いつも甘えちゃってごめんね。ありがとう」

「いいのいいの。こういうのは役割分担だから」

 もっと前のめりでくると思っていたのに、麻美はいつも以上に落ち着き払っている。これはもしかしなくとも怒っている?

「黙っていてごめんね。陽平のことで迷惑を掛けて、助けてもらったのに、薄情だったよね」

 初秋らしい柔らかな日差しに包まれて、テラス席のパラソルの下で頭を下げた。

「事後報告なのは正直悲しいけど、美月の事情があるんでしょう? まずはそれを聞かせてほしい。あと、さすがに急展開で心配してる」

 麻美の底抜けの優しさにぶわっと感情が込み上げて泣きそうになる。両手で顔を覆って一呼吸置いてから、巧さんと再会して結婚に至る経緯を包み隠さず説明した。

 突っ込みどころが満載すぎるので麻美はさすがに何度か口を挟んだが、一度も否定的な言葉を口にせず最後まで真摯に耳を傾けてくれた。

「巧さん、凄いね。美月にとってのヒーローだ」

 どうしてこんなに巧さんへ信頼を寄せ、短期間で好きになったのか感情の整理ができていなかったけれど、ヒーローという言葉がしっくりきて大きく頷いた。

 そっか。いつも大変な場面で助けてくれて、心を救ってくれたからだ。
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