「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました

 婚姻届を提出して夫婦になってからも、巧さんとの生活はこれまでと同じだった。

 夫婦のスキンシップについてもちろん考えたし、なんなら毎日それについては頭をかすめている。ただキスをしたり抱き合ったりというのは好きだからしたくなるわけで、私を好きでもない巧さんがなにもしてこないのはあたり前。

 むしろ夫婦という立場を利用しない巧さんは真面目でしっかりしていて素敵だ。

 巧さんがどういう気持ちでいるのか知りたいけれど、聞くには時期尚早で、困らせて、きっと私が望んでいる言葉は貰えない気がする。

 だから考えても仕方がない。とはいえ、私と同じ気持ちでいてくれたらいいな、と思ってしまう。強要されて人を好きになれるわけがないのに。

 期待しないのは難しく、そして期待した言葉が返ってこなくて傷つくのは怖い。そこは時間をかけて信頼関係を構築していけたらいいと思っている。

 私が毎日考えていることって、堂々巡りなんだよなぁ。

 全く寂しくならないわけではないが、私に向ける眼差しや優しさを含んだ声音など、隙間を埋めてくれるくらいの気持ちは受け取っている。

 私と同じ恋情ではなくとも、巧さんなりの情を注いでいるのは分かるから頑張れる。

 ……頑張る、か。

 洗濯物を畳みながらぼんやりと巡らせていた思考が行き着いた先にハッとした。

「片想いって難しいな」

 どんどん欲張りにならないように気をつけないと。
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