「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「ビックリした……」

 あえて口に出すことで緊張感を誤魔化す。ドクンドクンと高鳴る心臓がうるさくて、自分の足音や鍵を解錠する音すら聞こえないくらいだった。

「ただいま」

 扉を開けると巧さんの姿があってホッと安心したのも束の間。

「こんばんは!」

 後ろから響いた元気な声に身を引き締めた。ふたりが玄関に入って扉が閉まると、いよいよ心臓が喉から飛び出そうなほど高鳴る。

「初めまして! 矢沢です! 早戸をいつもお世話しています!」

 身長は百七十センチと少しくらいだろうか。がっしりとした体躯だから大きく見えているだけで、もしかしたらもっと低いかもしれない。

 目鼻立ちが整っていて彫りが深く、とても男性的な顔つきをしている。

 声の調子と相まってラグビー選手を彷彿させた。

 だいぶお酒が回っていそうだ。玄関のダウンライトの下でも分かるくらい頬が薄紅色になっている。片手にはコンビニエンスストアのビニール袋があって、飲み直すためのアルコール飲料が何本か入っているのが確認できる。
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