「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 あっちこっちに意識が飛び、自分の感情に振り回されてまだ挨拶を交わしただけなのに心の疲労感が凄い。失態を晒す前に自室へ引っ込んだ方がよさそうだ。

「疲れているのに、悪い」

 私の腰に手を回した巧さんは、私をリビングへ誘導する。帰ってきたばかりだからか、お酒を飲んでいるからか、いつもより高い体温が伝わってドキッとした。

「おーい、お客さんを忘れているぞ」

 背後からの声を華麗にスルーし、巧さんは私にぴったり寄り添ったままリビングの扉を開けた。

 人前でくっついているのがさすがに恥ずかしくなり、ぱっと離れてキッチンへ向かう。

「買ってきたお酒冷やしますか?」

「自分でやるよ。矢沢はソファに座って」

 矢沢さんはソファに腰掛けてうーんっと大きく伸びをしてから、キッチンカウンターにいる私たちを振り返った。

「早戸ひとりにしては広すぎる部屋だと思っていたけど、美月ちゃんと住む予定があったからか」

 おつまみもあった方がいいだろうと、冷蔵庫を開けて悩んでいるままの体勢から動けなくなった。

 そう、私も最初は疑問を抱いた。誰かと暮らしていたり、予定があったのかと。
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