「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「他は?」

「これも美味しそう」

 夏野菜カレーを作った時に余ったものが腐りそうだったので、野菜のピクルスにしたのだ。

「じゃあこれも」

 矢沢さんを待たせてはいけないと手早く器に盛りつける。巧さんはグラスをテーブルに運んだ後、冷蔵庫から缶ビールを取り出して矢沢さんの隣に座った。

 雑談を交わしながらビールを注ぎ合っているふたりの前に料理を出すと、矢沢さんは興味津々といった目つきで覗き込む。

「凄い! 料理上手なんですね!」

「お口に合ったらいいんですけど」

 お世辞だとしても、食べる前にハードルを上げられて不安だ。

「美月も飲むか?」

「へ?」

 料理を出してから自分の部屋に逃げようとしていたので、思いもよらない提案に呆気に取られる。

「美月が好きそうなチューハイも買ってきた」

 以前、お酒を飲むとき巧さんはもっぱらビールで、私は甘めのチューハイを好むと話した時があった。覚えていてくれて嬉しい。
< 146 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop