「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「お邪魔じゃないですか?」

「まったく」

「むしろ美月ちゃんと会うために来たんだから」

 淡々とした巧さんの声に被せ気味で、矢沢さんが弾んだ口調で言う。

 親友と呼べる友人がいきなり結婚したのだから、その相手が気になるのは自然なこと。麻美も早いうちに巧さんを紹介しろと言っていたし。

 ただ、巧さんは私たちの結婚についてどこまで真実を伝えているのか。

 巧さんの顔をジッと見つめると、巧さんはさっと立ち上がって冷蔵庫へ向かった。これは私も同席する流れだ。

「いいんですか? 男同士の方が話しやすかったりするものじゃないですか?」

 率直な疑問をぶつけると、矢沢さんは柔和な笑顔を浮かべた。

「一理あるね。でも早戸とはさっきまでふたりで飲んでいたし、それで十分。堅物男が惚れ込んだ女性がどんな人なのか、職場はその話題で持ち切りでさ。明後日、俺は唯一奥さんに会った人間として注目を浴びることになるなぁ」

 どこから突っ込もう。

 矢沢さんはとても素直な人で、心の声がそのまま口から出てきているという印象を受けた。
< 147 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop