「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「美月、こっちに座れ」

 戻ってきた巧さんはグラスと缶を持ったまま顎で矢沢さんの隣をしゃくった。矢沢さんの隣は緊張するので、首を横に緩やかに振る。

「向こう側に座ります」

「ん」と短く返事をした巧さんは手に持っていたものをテーブルへ置いて、すぐにオットマンを移動させた。

 カーペットの上に座ろうとしていたのに。

 そこまでやってくれる巧さんに感動する。気が利きすぎて、気疲れしていないか心配になるレベルだ。

 準備がようやく整い、三人で乾杯をしたのは十九時半だった。

「明後日に注目を浴びるって言っていましたけど、明日はお休みなんですか?」

 結局拾い上げたのはそこの部分だけにしておいた。巧さんがどこまで話しているのか分からない以上、会話は広げない方が賢明だ。

「そうそう。早戸も休みを貰ったよ」

「そうなんですか」

「後で言おうと思っていた」

 こくこくと頷き、だから今晩飲みに行ったのだと理解する。呼び出される心配がないんだよね。
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