「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「あれ? 美月ちゃん結婚指輪つけていないんだね」

 痛いところを突かれて眉尻を下げた。

 指輪はオーダーして二週間後である数日前に受け取り、巧さんは付けている。

「会社ではまだ内緒にしているんです」

「どうして?」

 どう説明しよう。

「事情があるんだよ。取り調べをするな」

 困っていると巧さんが場をとりなしてくれた。

 体調を崩した後、気持ちを新たに頑張ろうと決意したので、前を向く第一歩として巧さんには会社で置かれている自分の状況を洗いざらい報告した。

 だから結婚したからといって、すぐに会社で公にできない心情を理解してもらえている。

 その際に結婚式の時期を調整した方がいいという話し合いになり、互いの意見を交換するなかで、必ずしも披露宴を行わなければならないわけではない、というところまで行き着いた。

 巧さんには両親や親族がいないし、うちも離婚している。互いにそこまで交友関係は広くなく、列席者は会社の人間が多くなると予想できる。

 そうなると披露宴までに職場の人間関係をもっと修復しないといけなくて、精神的なプレッシャーを私が感じてしまう。

 一旦結婚式については白紙に戻し、夫婦になったという事実にだけ目を向けて暮らしていこうとふたりで決めたのだ。
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