「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 缶が空になったので、ふたりのグラスの残りと缶ビールの中身を確認した。おつまみはほとんどなくなっている。

「まだ飲みますか? おつまみも」

「気が利く奥さんだねぇ。おかわりします!」

「遠慮と言う言葉を知らないのか」

 巧さんが矢沢さんに冷ややかな目を送ったので、あけすけな態度にクスクスと笑った。

 面白い。ふたりのやり取りならずっと見ていられるかも。

 席を離れ、キッチンでひとりになって、ふうーっと息をつく。

 失態というか失敗? はあったけれど、巧さんの株を下げるような振る舞いはしていないよね。

 パスタの具材として買い置きしてあった生ハムとトマトとチーズを使って、簡単な一品を作る。

 冷蔵庫には缶チューハイがあと一本入っていたので、それと缶ビールを取り出してお盆にのせて運んだ。

「お待たせしました」

 ふたつのグラスは空になっている。ずっと顔が赤い矢沢さんと違って、巧さんの顔色は変わらないままだ。アルコールに相当強いのかもしれない。
< 152 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop