「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「え! この短時間で作ったの!?」

「切ってのせただけです」

 毎度大袈裟に褒めてくれる矢沢さんへの対応はさすがに慣れてきた。おかしくて笑うと、矢沢さんは両手で顔を覆って「うわぁ」と謎の呻き声を出す。

「どうした?」

「気分悪いですか?」

 ほぼ同時に私たちが声を掛けると、矢沢さんは手をぱっとどけて天井を仰いだ。

「いや、急に羨ましくなった」

 声の調子を落とした言い方だったので、もしかして失恋をしたばかりとか……と、想像を飛躍して心配になる。

「だったら、さっさと恋人を作れ」

 私とは対照的に巧さんは変わらず冷淡に対応した。

 あ、そういうふうにあしらっても大丈夫なのね。

「警視正、しかも捜査一課。こんな多忙な奴と付き合ってくれる子、そういないんだって」

 確かに多忙ではあるけれど、そこまで?

「まずデートができない。予定を組んでも仕事になることが多いし。ドタキャンやリスケを繰り返しているうちに愛想を尽かされる」

 首を傾げそうになったところで、続けられた矢沢さんの言葉にはっとした。

 そうか。私と巧さんは帰る場所が同じだから毎日短時間でも顔を合わせられるけれど、そうじゃなければ会えないことで不安や不満は積もるよね。

 陽平とも会社で毎日会っていたし、デートができないからという理由で苦しい気持ちになったことは一度もなかった。
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