「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「見合いすればいいじゃないか」

「それ、おまえが言う?」

 会話をしながらそれぞれのグラスにお酌をして、誰ともなくグラスをコツンと合わせる。

「俺は結婚願望がなかったから。矢沢は結婚したいんだろう?」

「お偉いさんたちが紹介してきた子を振れるか? もうお見合いした時点で、その子と歩むレールが敷かれる」

「そこまで考えているのか。意外だった」

 私もお見合い結婚の裏側にある事情を始めて知って驚く。

 言われてみればそうだよね。結婚って、本来もの凄い覚悟を持ってするものだ。

「だから早戸が羨ましい。好きな子と結婚できるのが、妬ましいんだよ!」

「好きなだけ妬んでもらっていいけど」

 肩透かしを食らった矢沢さんは、「くそーっ」と、料理をかきこんだ。

 すぐなくなりそうだ。もっと作ればよかったかな。そもそもこれだけ食べるのだから、外では食事をしていないのかも。

「美月ちゃんみたいに可愛い子だったら、ありだけど」

 もぐもぐと、リスみたいに頬を膨らませた矢沢さんに見つめられる。
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