「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「美月ちゃんが火傷したんだ。電話していたのか?」

 巧さんの手にはスマートフォンが握られている。

「着信があったから、かけ直していた」

 コトンと音を立ててカウンターにスマートフォンを置くと、巧さんは矢沢さんの腕をわりと強引に掴んだ。

 驚いたのは私だけじゃなく矢沢さんもで、目を見張って石像のように固まった。

「ありがとう。代わる」

「あっ、うん。俺もトイレ行ってくるわ」

 ぎこちない動きで矢沢さんが距離を取り、そそくさと出て行った。

 こんなふうに不機嫌さを露わにしているのは初めてだ。電話が仕事なのかプライベートなのか分からないが、よくない用件だったのかもしれない。

「どれくらい冷やしてる?」

「二、三分くらいかと。そろそろいい気がします」

 手が冷水にさらされ続けて氷のように冷たく、感覚が麻痺して痛みは感じていない。
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